腹壁瘢痕ヘルニアとは
腹壁瘢痕ヘルニアとは、開腹手術や外傷後の傷跡(瘢痕)が大きく膨らんでしまう状態を指します。この膨らみは、立った時、せきやくしゃみをした時、排便時などの腹圧がかかった時に大きくなることが多いです。腹部の手術の合併症のひとつで、術後10年間で約1割の方に起こるといわれています。
開腹手術を行ってお腹を閉じる時には、皮膚、皮下組織、筋膜、腹膜を縫い合わせます。しかし、手術後に傷の感染を起こしていたり、術前の栄養状態があまり良くなかったり、元々筋膜などが薄い方は、筋膜の癒合が悪くなって隙間(ヘルニア門)が生じます。その隙間から、腸管が出入りしている状態が腹壁瘢痕ヘルニアです。
腹壁瘢痕ヘルニアは自然に治ることはありません。立った時など腹圧がかかって膨らみが大きくなることが多く、仰向けに横になると元に戻ります。また、ヘルニア門の大きさや、出入りするものによっても症状は変わります。
腹壁瘢痕ヘルニアを引き起こしても、特別な症状が認められないケースもあり、ヘルニアが大きいほど症状を自覚しにくいともいわれています。しかし、症状がある場合には傷跡の周辺に不快感を覚えたり、お腹の痛みを感じたり、便秘気味になることもあります。
腹壁瘢痕ヘルニアの治療について
メッシュを使った手術をします。再発率が15~20%あります。昔は穴を閉じることが主流でしたが、腹壁の機能温存に注力する術式にかわってきています。検査をして傷跡の中に、いくつかヘルニアがありそうな場合には、手術をしても再発するケースが高いため、腹腔鏡を用いている専門の病院に紹介することがあります。
腹壁瘢痕ヘルニアのQ&A
Q.「かんとん」にならないのか?
A.鼠径ヘルニアよりはなりにくいですが、可能性はあります。
Q.どんな方がなりやすいのか?
A.肥満の方、喫煙している方、呼吸器疾患がある方などがなりやすいと言われております。
病院によっては体重を落としてからでないと手術をしないケースもあります。
また、肥満の方は再発もしやすいため、普段の健康管理にも気をつけていただくことが一番の予防となります。
Q.腹壁瘢痕ヘルニアは自然に治りますか?
A.腹壁瘢痕ヘルニアが自然に治ることはありません。現時点で、手術が唯一の治療方法です。