手術を行った側がまた鼠径ヘルニアになってしまうことを再発性鼠径ヘルニアといいます。メッシュを使用した手術の場合の再発率は2~3%以下と報告されていますが、再発する可能性がゼロとはいえません。
再発の主な原因は手術の方法や手順にあることが多いですが、たとえ研鑽を積んだ医師が手術を行ったとしても再発率がゼロになるとは言い切れず、中には不可抗力によって再発が起こるケースもあるので、まずは再発する要因について理解しておくことが必要です。
鼠径ヘルニアが再発する理由
鼠径ヘルニアの再発率は手術の方法で大きく変わると考えられますが、手術後も後天的な要因(立ち仕事や力仕事を継続したことや、激しい運動など)が継続的に重なったことで再発してしまうケースもあります。現実的に考えて、仕事や職種を変えることや運動をしないようにするのは難しいと思いますので、ご自身が脱腸になりやすい体質であると自覚する必要があります。
メッシュが縮むことによって再発する場合もあります。2009年以前に使用していたヘビーウエイトメッシュが30%以上縮むことがあり、縮むことでカバーしきれなくなり出てきてしまいます。
近年では、縮みにくいメッシュが標準で使われるようになりました。再発率が0%ではないですが、昔のメッシュと比べると再発する可能性が低くなっています。
再発の症状としては、手術前と同じです。やわらかく押せば戻るようなしこり・出っ張りが同じような場所に確認されます。しこり・出っ張りはないものの、痛みだけがある場合も再発の可能性があると考えられます。また、再発でも嵌頓(かんとん)になってしまうことがありますので、少しでも気になることがあれば早めに受診してください。
手術治療をしていない側に鼠径ヘルニアが出た場合は再発ではありませんが、例えば、左側が鼠径ヘルニアになった方は、右側もなりやすいと言われています。統計では、鼠径ヘルニアになった10%以上の方がヘルニアになっていなかったもう一方の片側もヘルニアになっていると報告されています。
当クリニックの再発を予防する取組み
当クリニックでは、開業から現在(2018年7月)まで約600件以上の手術をおこなっておりますが、再発したケースは1件もありません。
学会や研究会などに積極的に参加をしており、当クリニックでの再発予防だけではなく、若手の先生たちにも再発をしないための取り組み・手術技術の普及に務めております。
万が一再発した場合どうする?
手術後に再発したという患者様が月に2〜3名程来られます。患者様より手術の事をお聞きし、実際に患部を超音波検査して再発原因を確認して、再発形態を把握します。その際、どうして再発したのかを調査しながら手術を実施しますので、再発した原因もほとんど特定できます。当院では、再発例など、困難な症例もセカンドオピニオンを受け付けています。専門家として責任をもって診させて頂きますので、一度ご相談下さい。
再発性鼠径ヘルニアQ&A
Q.他院で手術した鼠径ヘルニアが再発してしまいましたが、手術をしてもらえますか?
A.受けれます。術前検査、手術時間は基本一緒です。皮膚切開の位置を変更するぐらいです。前の手術の瘢痕あるから、術後の痛みは、最初の手術よりも強い場合があります。
Q.再発を予防する方法は?
A.再発には生活習慣が関係しています。日々の生活において、お腹に余計な力がかからないよう、少し気を付けていただくことで再発のリスクを低下させられると考えております。
立ちっぱなしの状態が長く続く、重たいものを持つ、過度な筋力トレーニングを行うと腹圧が上がります。また、喫煙をされる方、肥満体形も鼠径ヘルニアと関係しますので、当てはまる方は生活習慣を見直すことが予防につながります。
Q.再発したヘルニアを手術した場合の術後回復はどうですか?
- A.多くの場合、術後2~3日で日常生活に復帰して問題ないと考えられています。仕事への復帰については、事務職など負担がかからない業務なら問題ありません。しかし、重たい荷物を持つなど、下腹部に力が入る業務の場合はご相談ください。